2015年1月3日土曜日

阿鼻叫喚年末ダイブ 二日目 しょの弐

全く人間と言うものは何時その生命活動を終えるのか誰にも判らんものです。
故に生きているうちに、何事もやり過ぎる程に生きなきゃ勿体無いのだ。死ねば死ぬのだ。

ウェイトが何故落ちたのか・・・当の本人が「わからんのぅ」とホザイテいる以上、どうしようもないわぃ。
G3s弐号が勝手にクタバルのは世の習い。救うべきは若い順番だ。
嗚呼、もっと保険を掛けさせておけば、
受け取りを我々にしておけば、
我等の心も麗らかであったろう。


二本目は桟橋半ばから先端部、そして根だ。
無論、万が一、皆と逸れた場合の浮上位置は桟橋の西側と取り決めてある。
そして、G3s弐号から残圧50bar の合図が来た。
BCDからエアを抜けとサインする。今回は先程の説教が少しは効いたのか丸メロ軍曹もマネをしてエアを抜き始める。
G3s弐号は相変わらずマネのみ。そりゃそうでしょ幾ら右肩を上げたってエアは抜けねぇずら。
G3s弐号を羽交い絞めにして左肩を上げさせて強制エア排除。
出るわ出るわ、こんなに溜め込んで・・・だからジジイは。
桟橋の柱の中で徐々に上昇を始める。
柱には様々な生物が住んでいて面白い。
水深6mを切ったので水平を保っての安全停止。
丁度柱に可愛いオコゼの赤ちゃんが。
王子、丸メロ軍曹、G3s弐号が順番に写真を撮り始める。
撮影の邪魔にならぬ様に柱の裏に回る私。
柱の左から王子が出てくる。右後方から撮影を終えた丸メロ軍曹が見える。
G3s弐号のフラッシュが光る。
その瞬間、G3s弐号がキ・エ・タ。
御見事に消えた。首を下げて海底を見ても、首を上げて海面を見ても居ない。
もうね、始めっから居なかった事にしても良いんじゃない?って位に消えた。
実に見事な消エップリだ。カッパーフィールドを超えた。
全米が鼻で嗤った。

もうええわ。車で帰る途中でG3s弐号が関節痛とか眼底圧迫とか訴えてきたら放り降ろして存在しなかった事にしたれ。
そう決めた。
王子と丸メロ軍曹に、バディで安全停止を続け、その後浮上せよと合図・・・
あぁぁぁぁ丸メロ軍曹が再びネオ・ローラに・・・

こいつの耳元でタンクを叩いても此方を全く見ようとしない。
わずが200ルーメン如き糞ライトを振り回してG3s弐号を捜索しておる。ムダムダムダァァァ。
頭を指示棒でブッ叩いて振り向かせる。緊急時って理由の役得だ。
今度はバディが仲良く安全停止を終えて桟橋を離れるまで見送れた。
未だ100bar以上のエアが私のタンクに残っていたので桟橋内を先端部から半ば迄G3s弐号を探す。
四人死ぬよりは三人、三人よりは二人、二人よりは御一人様が宜しいに決まっておる。
せめて亡骸位は拾ってやらねば海が汚れるしな。
身に着けていた機材はヤフオクで処分→飲み代な。
遺族には何を渡そうか。そ~だ!使い道のない遠近両用度付マスクにするべ。
おっと、金歯の一つも付けていたかも知れんな。金相場はどーなっておったかな?
・・・こーゆー時は最悪事態だけを想定するのだ。最悪事態の後の最良を考えるのだ。

全く見当たらない。ヒョッとして“変な宇宙線”が偶然にもG3s弐号にだけ、ぶつかって消滅したのか・・・
遂に桟橋内部に浮上して「クソジジイ~」と呼ぶが影も形もない。
・・・この世からスケベジジイが約一体消えた・・・
浮上予定位置に水面移動。
・・・どんだけフロート打ち上げに手間取ったのか、今頃になって丸メロ軍曹のフロートが私の傍1mに打ち上がる。
ボートを探すが見当たらぬ。
王子が「G3s弐号は?」と尋ねる。金歯を売るのは諦めたわ。と答える。

ボートが桟橋の浮上予定位置の反対側から回ってやってくる。
あのクソジジイがボート上でニコヤカに手を振っている。思わず罵声を発する私。
今、此処にショットガンかあったら迷わず引き金を引くね。

 全員がボートに乗ってからジジイにドーしてコーなたっ?と尋ねる。
G3s弐号「判らん。仏さんが呼んだんやろ。」
ドーしてアッチに浮上したん?
G3s弐号「え、打ち合わせ位置通りに浮上したよ。わしゃ間違っとらん。」
話の時空が完全無比に噛み合わない。
ついでに私のダイビング・コンピュータは余りの出鱈目さにビービー喚きストライキを始めた。
うるせぇ!金相場に目が眩んだんだよ。

 G3s弐号の直ぐ傍に居た丸メロ軍曹は当時の真相を目撃していた。
右手でカメラ、マスクはモニターへ、左手でインフレータ・エア入れボタンを押しまくり、フィンは上昇キックの老体の姿を・・・
そのままの姿で潜水艦から打ち出されるハープーン・ミサイルとなって海面に噴出されるG3s弐号の御見事な勇士を。
選んだ潜行ポイントが浅いJettyで本当に良かった。プールの方がもっと良かった。
もうね・・・言葉もないっすよ。私・・・減圧チャンバーに引きこもりたひ。

 幾ら自己責任で潜っているとは言え、何か有れば、その責任を誰かにおっ被せないと気が済まないのが遺族の心情だ。此ればっかりは否定できない。
G3s弐号の奥さんや娘さんとは縁も所縁もない私。
絶対に本人が自分の意思で犯ったと叫んでも、私を遺族は許さない。
「オジイチャンはね、あともう1兆円は稼いで家に入れてくれる予定やったんよ。どーしてくれるの?!お金で解決してよぅ。お金だけで良いから。」と奥様に責められないと言う保障はないのだ。
インドネシアやったら民事だけではなく刑事訴訟も付いて来るやろうね。ま、有罪は確実。刑務所で貯金に利息が貯まるのを待った方が良いかな。

 地獄のボートがショップに戻る。G3s壱号はG3s弐号と出会えて尻尾を振って喜んでいる。こいつらは連れションじゃないとオムツに漏らす位に何時もくっ付いている。(但し腐女子Tスケの好みの範疇外)
G3sは「さっきのダイビングは凄く楽しかったよ。明日も潜ろうネ。今夜は日本食が良いな♪」
仏になって金歯を抜かれていたはずのジジイが・・・。
恐らく過去の美しい想ひ出だけがフィルターで濾過されて残っているのだろう。その時点で初めて「反省」ソフトが自動起動する様に出来ている。人生の達人だ。

 Sanurまで運転して戻ったら、ドッと疲れを感じた私は皆に今夜の宴会を欠席して休む旨を伝えた。
G3sは今夜の宴会場が日本料理屋のKOKOYAだと聞いてウキウキしていた。
ムッチャ疲れた。頭痛が痛い。

 そう言えば、今作戦後半部に参加するNスケ嬢が昼過ぎ着の飛行機で日本からやってくる事になっている。
そのNスケから病の床につく私へ電話連絡。
「ん・ぐららい空港国際線、タクシーチケット売り場からタクシーに乗る間に財布を盗まれた。」
Oh ! What's A Fucking Beautiful Day !

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