2020年10月30日金曜日

潜水隊員の日本一時帰国紀行(ブランタス2020年11月号記事)

 

Hysteria

「路肩で販売されているマスクや所謂スクーバマスクでは感染を防げない!」インドネシアの感染状況にはいよいよヒステリーが極まってまいりました。専門家でもないのにマスクでウィルスを防御しようなんて、竹槍で飛行機を堕とそうとしているも同然です。多くの先進国が使用を取り止めて今では独自規格を作った当のC国ですら使われないKN-95規格のマスク。インドネシアでは何故か重宝されている。街場で売られているマスクを排除し、C国からの援助マスク在庫を売り払いたい勢力の陰謀なのか…。

マスクは本来が感染者が飛沫を他に発しない為のものですぜ。健常者の防御には其れなりの素材と訓練が必要だ。当方、それなりの訓練を受け且つそれなりの資格を持っていますが、正しいマスク装着で防御を行おうとすれば半日を過ごすのも無理でありんす。


【一時帰国"実話"レポート 人間失格編 】

98日 スラバヤチャンギ大阪のトランジットでの移動がSQ系列でのみ可能になった。チャンギ空港での乗り継ぎ時間は約70分。片道価格も10月発では3万円。それ以降も3.5~4.5万円程度。インドネシア生活に飽きた私は一時帰国を試みた。日本の空港での抗体検査で陰性ならば、公共輸送機関で移動せずに14日間(到着日は含まれず)の自主待機、即ち自腹での収容所暮らしを国からは求められる。14泊でも18泊でも殆ど料金変わらずの4万円台半ば価格と言う大阪市内中心部のアパートメントホテルを予約できた。大阪には全く不案内な私だが空港からは大阪に帰任している隊員の助けを借りての移動となった。

10月にダイビングも行っていたが、潜水隊ブランタス方面担当部長より「これから一時帰国する方の参考になる様、貴隊員の一時帰国のレポートを書くのじゃ。」との司令を受けた。従って現在は大阪民国の首都にて此の文章をしたためている。

何故の一時帰国?旅費と時間が有り且つ一時帰国したいからだ。日本食材のストック…消費期限が1年前〜半年前ならセーフと納得する生活に飽きたからだ。人間の行いに”不要不急”など存在しない思想主義だからだ。支那に拠る全世界-ポンコツ-バイヲ-テロの状況を実体験できる貴重な機会だからだ。自分探しの~癒やしの~或る方面からはただ単純にハタ迷惑な旅だ。大阪には自腹収容所期間+αの滞在予定。仕事で取り扱っている商品の偽物業者がアジトを大阪に構えている事も突き止めたので、自粛期間後にアジトへ”カチコミ”を仕掛けるのが唯一の仕事と言えば仕事だ。

Exodus

前夜に潜水隊の「裏・秘密宴会」をやらかした翌朝、一応早め(フライト時刻の2.5時間前)Juanda空港国際線ターミナルに到着。SQのチェックインカウンターでスーツケースを預ける。

SQ嬢「大阪までですね。日本入国のパーミットは有りますか。」

SQ嬢が手にしている私の赤いパスポートを指差す。

私「アタシ ニホンジン アルヨ タブン。パーミットナイ ダイジョブネ。」

2階に上がりチケットのバーコードを翳し保安検査/イミグレを抜ける。朝食を期待していたラウンジは閉鎖中。搭乗待合室の保安検査は休暇中。私が入って暫くしてから空調が入る。




どう数えても乗客は10名。アクアの小ボトルが参加賞として手渡される。機内の食事は三口で終わる。此のご時世だ、航空会社だって懐事情は厳しい。ケイタリング会社だって稼働しているのか怪しい。エネルギーバーを持ち込むべきだったと後悔。エンターティメントの映画は全部古い。今時Pakuwon MallDVD屋でも奥の方に置かれる作品ばかり。トランジットの乗客の手首には蛍光黄緑のリボンが巻かれる。留め具がラチェット式なので下手に締め付けるとヤバい装具だ。最終目的地まで取り外しは許されないそうだ。

Civilization

シンガポール チャンギ国際空港でのトランジットのロジステックは非常に良く出来ていた。到着後先ずはシンガポールへ入国する乗客が機外へ出る。次にトランジットの乗客が全員揃うまでボーディングブリッジ上で待機。其処で係員から移動の最中はマスクを取らない/何も触らない等の注意説明を受ける。複数の係員に護送&監視されながらトランジット待合スペースにドナドナ移動する。


移動する間に眺めた免税店/トイレ/喫煙所/レストラン/全て閉鎖中。トランジット待合スペースには小さなスナックの売店等の全ての施設が一応揃っていた。7~8ヶ月前は複数のモニターに表示しきれない数の出発便案内が表示されていたが、今は裏寂しくなる数しか表示されていない。

 



屋外の喫煙所で先程まで我々を引率してきた係員と会話する。

 


係員「スラバヤからどこに行くの。日本?」

私「日本に向かう前に此処でトランジットしてシビライゼーションに慣れておきたいのだ。」

係員「あ〜わかるわ〜それ。」

昨年出来た施設JEWELを指差す係官「あそこも悲惨だぜ。」

この先数年は海外旅行よりも宇宙旅行の方が現実的である。

to Japan

Osaka 行きSQ622の搭乗案内が始まる。てっきりこの待ち合いスペースからそのまま搭乗かと思いきや、再び集団で移動する。再び保安検査があるので飲用水は此処で飲みきるか廃棄する様に指示される。並ぶための個々のスペースが床に描かれている。乗客は全員で30名はいない。ドナドナ移動後に保安検査を抜ける。抜けた後も椅子に座ったりトイレや飲用水補給は許されない。全員揃うまで床に描かれたスペースで起立整列したまま待つ。気分はドキドキ集団強制送還♪そして搭乗。

日本行きのエンターティメントは多少新しいものが揃っていた。HEPAフィルターを用いる為に空調は常に強風。それなりの服装を持ち込んではいたが冷える。毛布も十分には積んでいない(21時の関西国際空港に降りたら暖く感じた)。離陸間もなく日本時間で16時に夕食が配給される。4口で終わった。夕食というよりもオヤツだ。飲み物にビールは無い。ここでも航空会社の懐事情の厳しさが身に沁みて判る。こればかりは納得して受け入れるしか無い。乾燥した機内故に飲用水が欲しい。何度か要求したが叶わず。唐突にCAがワインがあるけど飲む?と尋ねてきた。もう水気のあるものなら何でも飲む。

fu'n my first KIX

SQ622は呆気なく予定時刻よりも早めに関西国際空港に到着。


初めての関空だ。私はどの国でも検疫/入管/税関には空港会社や航空会社並のサービスは初めから求めていない。乗客は距離を置いた椅子に座らされて唾液を用いた抗体完全検査のブースに臨む。1mlで十分と言われたが、渡された容器の最低線は明らかに5mlはある。個別のブースで自己採取する。壁面に貼られたレモンと梅干しの紙が私を冷たく嘲笑う。乗客同士が向かい合って行ったらセクハラだろうか。唾液が出ねーよ。唾液をチェックするお姉さんから「頑張って、もう一回」と何度も励まされる。朝からの激しく乾燥した空気での機内生活。限られた水分補給。◎ッパイ写真の方が未だ唾液が出るのではなかろうか。そんな思いと焦り。上前歯で舌をゴリゴリしていたら・・・出血。こうなれば体液なら何でも良いのでは。不埒な赤い唾液?で血増しされた容器をお姉さんに提出してみる。拒否しても当分は赤い唾液だよ。あっさりと受領された。

【怒る時に怒らなければ人間の甲斐は無い。by 太宰治】

その後記入した用紙のチェックコーナーに並ばされる。通路を塞ぐ様に4つの机が並び係のお姉さんと個別に対話することになる。私はLINEアプリを使わない。その旨も申告する。

姉「えぇ、LINEを使っていないって本当に日本人なんですか。」

非難めいた大声で言われた。周囲の人も此方を見てる。未だ我慢。

私「はい。使っておりません。従って連絡方法はホテルの代表番号かインドネシアの携帯電話番号、もしくはe-mailとなります。」

姉「あなた、今時LINEを入れてないってチョット変過ぎますよ。」

私が”変過ぎ”なのは認めるが、LINEアプリは日本国民の義務ではない。大きな声で非難がましく言われ続けた私も切れた。

私「あのう、貴方はLINEからの出向者ですか?それとも此処の検疫局は何時からLINEの下請けになったのですか。いずれにせよTiktokや微博、LINE等のイカガワしいアプリは入れたくありませんから。」

売り言葉に買い言葉だ。お姉さんに負けぬ声で言った。 やっとこさ帰国したのに常在戦場だ。

空港は雇用対策でもある。此のカウンターで乗客の相手をしている20歳過ぎのご婦人達は検疫局の正規職員ではなく人材派遣会社の契約スタッフであろう。恐らく乗客は大人しく彼女達に対して静かに従順に従い立ち去るのであろう。そうすると何時の間にか自身の方が立場が上になった様な勘違いも生じるのも人情だ。しかし私はヤられたらヤり返すのがモットーだ(半沢直樹以前から)。話にならぬので勝手に席を立ち渡すべき紙だけ投げつけて次のステージに向かう。

Hell Yeah!

丁度銀行で順番待ちする様な場所。目の前にモニターが置かれ検査結果で陰性が認められた者の番号が表示される。番号以外に日本語/英語/漢字っぽい敵性言語/視界に入るだけで嫌悪するヘンテコ象形文字 の4言語での説明が入れ替わる。番号が表示された者は係のお姉さんに告げ自由の身へと向かう。30分から45分位で全員が出ていった。私以外は…。

・待つ事60分経過

空腹も限界に近付いている。この間に車を出して迎えに来てくれている在阪隊員に連絡を取りたいがアンテナが立たない。wifiも使えない。

90分経過

係のお姉さんに私が告げる。

「出迎えの人にも悪いんで”陽性”って事にしてもらえませんか。」

お姉さん「判定連絡が来るまで動けませんよ。規則です。」

120分経過

此処で空腹ながらも脳内のSynapseを絞り出して考えた。

今私の”赤い唾液”の検査を行っているのは遅番の臨床検査技師であろう。医療現場で直接患者に接する医者や看護師は或る意味でサービス業と割り切らざるを得ない部分がありそのスキルを持っている。しかし、普段バックドアで働く臨床検査技師にはそのスキルは往々にして無い。恐らく彼(彼女)は理系オタク魂を全開にして陰とも陽とも表れない私の”赤い唾液”と対峙しているのではないか。検査技師の名誉と誇りをかけて時間を忘れて検査に熱中しているのではなかろうか。結果を出せない奴と同僚からの嘲笑を恐れているのではなかろうかと。”赤い唾液”ってシャアですか。

私「今夜の便はもうないし、必要な経費は支払うからもう一回検査してくんねぇかなぁ。」

姉「規則なんで出来ません。」

私「申し訳ないねぇ。残業代はチャンと出るの?」

しかし腹が空き過ぎた。

150分経過

空腹は臨界を過ぎ我が非常用電源も喪失。渡辺謙と佐藤浩一がFukusihimaSBOと叫ぶレベル。

”規則ですから”…直接的な表現を避けるならば台詞が意味するのは”私個人が無能です”だ。

プロなら相手を納得させ落ち着かせる手練手管を持っている。しかしお姉さんは持ち合わせて無いと自己申告している。20歳代前半の娘さんにこれ以上御自身が無能だと言わせてしまうのは自称紳士として忍びない。彼女には規則”に則った行動で対処していただくしか術は無い。ならば…

私「あのう私、これから荷物を持って出口に向かって逃走を図ります。今の内に警備員を呼んでいただけますか。この場合は多分”規則”でそうなっていると思うのですが。」

姉「?!?!」

真面目に走っての逃走は腹が空いてるし疲れるから嫌だわ。此処は速攻で大人しく警備員に確保される。お姉さんは私の身柄を警備に引き渡して今日の業務を終えられる。私は事を大事に仕立て上げて、臨床検査技師の真意を知ることが出来る。私を取り調べる係官の分まで私が夜食を奢る。そうだ今夜はカツ丼にしよう。食後は黙秘で通す。上手く行けば72時間は無料で眠れて食事が出来る。もっとラッキーなら拘留延長で240時間分のホテル代も浮く。うん、大岡越前も真っ青な良い事尽くめのアイデアだ。拘留ってスーツケースも持ち込めたっけ。スマホの電源くらいは貸してもらえたっけ。日付も変わり よっこらせっと立ち上がりストレッチを始めていたらお姉さんの無線機から連絡が。

姉「陰性でした。どうぞ入管へ向かってください」

私はモニターを指差してアピールする。

私「私の番号の表示が無いよね。規則上はどうなの。聞き間違いかもしれないし言い間違いかもしれないよね。」

私のステキなカツ丼へ向かうアイデアを無駄にしてもらいたくはない。

お姉さんは私に背を向けて無線機で会話している。こうなったら少しでも長居してやる。

モニターに私の囚人番号だけが灯る。

姉「もうそのモニターの電源も切りますから。早く行って下さい。」

トボトボと歩き出す私。私と外で待ってくれている隊員の失われた時間と得られた空腹に対する怒りもトボトボと湧いてくる。通路に設置されている監視カメラを見つけては精一杯の中指を突き出す。

入管誰もいない。「出て来ぉぉぉい、哀れな鴨がネギ背負って来たぞぅ。」と声を掛ける。どこかのドアが開いて係官が走り出てくる。税関も同様だ。

到着が予定より早めの21:10。そして00:45にようやく娑婆に出られた。電話もつながるようになった。待機中の隊員に電話する。彼は私が飛行機に乗っていない可能性と闘いつつも"りんくう"と言う場所で待機してくれていた。今から向かうから30分待ってくれと。彼に平謝りしか私には術が無い。

Sorrow in Osaka

ここが東京ならば公共輸送機関たる山手線で一周して同じ駅に降りてやりたい気分だ。公共輸送機関での移動はしていないと言い張りたい気分だ。しかし既に公共輸送機関たるエスカレーターには乗って移動してしまった。建物の外に出たらバス停。誰も居ない。喫煙所の表示を探すが見当たらない。スーツケースの載ったカートを放置して再び監視カメラを探して歩く。カメラ監視に丁度良さそうな位置に立ち携帯灰皿と一本を取り出して火を付ける。これで警備員がやって来るであろう。私は日本語以外で喫煙所の場所を問えばヨロシ。2口、3口吸っていると建物のドアが開いた。スーツジャケットの下に羊毛っぽいベストを着たオジサンが私を注視している。睨みつけている。ツカツカと近付いてくる。よぉーしっ、そのままコチラに来るのだ。私とて今の行いが社会的に宜しくないことは重々承知している。最大級のお詫びと共に改めて喫煙所の在り処をご教授頂こうではないか。

「ココって吸っても良い場所なんですね。」

オジサンもポケットから取り出した。監視カメラに見つめられた2人は仲良く煙を吐くのだった。

帰国迄の参考になったであろうか。

私からのアドバイスは

·普段からどんな時でも唾液をタップリと出す訓練を怠らない事。

·飛行機を降りたらスマホの録音機能はついウッカリSwitch On にする事。

·関西国際空港は警備を厳重にして欲しい。

以上3点です。

次回インドネシア入国編 or 入院編に続く?

0 コメント:

コメントを投稿